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若木未生さんのバンド小説「グラスハート」

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若木未生さんのバンド小説「グラスハート」を読んだ。
音の表現がすごくよくて、鳥肌と涙が止まらなかった。

漫画でも小説でも、最後まで読み終わると、このあとどうなったんだろう気になるから番外編でもいいから続きを書いてほしい!って気持ちになることが多いんですが、グラスハートにはそういうのがなかった。
それくらい完璧なラストだった。

ああ、このバンドの曲めっちゃ聴きたい・・・。

あらすじ-----------------
「女だから」という理由でバンドをクビにされた高校生・朱音(あかね。キーボディスト)が、ひょんなことから新しいバンドに加入することになる。なぜかドラムで。

そこでベースボーカルを務めている天才作曲家&プロデューサー藤谷さんが、いつのまにかCMのタイアップを取ってきたり、すぐレコーディングしないと間に合わないとか、直近に大きなライブを入れてしまうとかいろんな騒動がやってくるんだけど、それを乗り越えて大きくなっていく話。
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好きなところは2つ。

■登場人物の、特に人間関係がリアル。
└このタイミングでこの人がでてくるの、超納得。みたいな感じ。人物設定がしっかりしている証拠。だから最後まで読んだあとも、続きが読みたいってならない。今後が想像できるから。

■音楽の表現がいい
└人物像がはっきりしているので、細かな説明がなくてもどんな音なのかがわかる。わかるんだけど、でてくる音がいい意味で予想を裏切ってくれるので毎回鳥肌がたつ。最終巻のラストとかもう・・・!

個人的な話になりますが、私は昔から音楽の世界に入るのに「女性」という肩書きって邪魔だなって思っていて。自分が女なのが悔しいっていつも思っているんですが。だから冒頭の「女だからクビ」っていう理不尽なスタートから、この話にのめりこんでいきました。

そこで加入したバンドは、性別で悩む時間なんて全くなくて、みんな音楽に真剣で、妥協がなくて、藤谷くんとかハードワークすぎて心配になるくらいなんだけど、その感じがすごく好きだった。

若木未生さんの小説にでてくる人って、いい意味で気が狂ってる人が多いので、文章に句読点がないときが結構ある。その句読点なく突っ走ってる感じもまた好き。

なんか淡白な文章になってしまったので、主要登場人物への想いをしたためてみる。笑

★朱音:友達になりたいくらい大好き。私が泣いてる時は彼女もだいたい泣いてる。でもなんであの人と付き合ったの…!(猛爆)

★高岡くん:常にギターを持ってるひと。音楽業界に入って、楽器を愛してない人がたくさんいることに内心腹を立ててるんだけど、普段はバンドの中で一番オトナ。だけど、その怒りはギターの音色に全部でてる。そういう人です。セーラムライトの男。

★坂本くん:外界を遮断するためにヘッドホンでクリック音を聴いてる場面があって、この人似てるなーって思った。最終巻の彼は結構好き。

★藤谷さん:あなたが幸せにならなきゃだめだよって気持ちでいっぱいです。4巻のラストが衝撃的で、リアルタイム読者は、ここから最終巻がでるまで6年待ったとか辛すぎるって思った(笑)朱音と勝負をするシーンがあるんだけど、負けたのに地面に転がって「どうしよう名曲できちゃった!」って言う藤谷さんがもうばかやろう大好きってなった。

★真崎さん:朱音たちのライバル的バンドのカリスマボーカリスト。藤谷さんと異母兄弟で過去が色々辛い。不器用なのに自信家。熱狂的ファンが多いのもわかるって感じ。この人が涙したシーンが焼きついて離れない。

★鮎見:真崎さんのバンドの熱狂的ファンで、彼に特別扱いされてる人(彼女ではない)。いろいろ自分と重なるところが多くて、彼女のラストシーン(死んでないよ!笑)が一番泣いた。挿絵も入ってて余計泣いた。よかったね!!!って抱きしめに行きたいけど、誰の包容も意味がないって思う。真崎さんかっこよすぎるよばかやろう

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ちなみにこのグラスハートシリーズ、1巻がでたのが約20年前(!)
最終巻が出たのが4年前。しかも最終巻だけコバルト文庫ではなく幻冬舎からの出版(のちにこうして全巻幻冬舎からでました)。

その理由があとがきに書かれていて。当時コバルト文庫はファンタジーが主流で、こういう青春小説は全然売れなかったらしい。(ファンタジー系の1/3だったそうだ)で、体調をくずしたり色々あって、コバルト文庫からだせなくなって、6年の歳月を超えてやっと幻冬舎から最終巻がだせたという経緯があるみたいです。

そういえば羽海野チカさんも、ハチクロの続きが出せなくなって、いろんな出版社にお願いをしにいって今があると、この間でた漫画に書いていましたが、本を出すということはたいへんなことなんだなと思ったのでした。

音楽好きな人に読んでほしいです。でもこの幻冬舎からでた新装版、全部買うと6000円ちょっとするので(だってコバルト文庫10冊分+描きおろし番外編がいっぱいある)、読みたい人にお貸ししたいくらいです。ああでもコバルト文庫版だったら古本屋にあるかもしれないけど図書館とか…読んで気に入ったら買ってくださいたぶん買うことになると思うけどって気持ち(←グラスハートの影響で句読点がなくなってる)

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なんで突然20年前の小説にはまったかというと、感傷ベクトルというアーティストのインタビュー(http://www.cinra.net/interview/201406-kanshovector)を読んでたら、「愛読書はグラスハートです。レコーディング前とかに読んでます」って言ってたからなんですね。若木未生さんは「ハイスクールオーラバスター」シリーズという私の人生の一冊級に大事な本の作者でして。なのになぜ私はこの人の音楽小説を読んでないんだ・・・!と頭を抱えて本を買ったのでありました。

その感傷ベクトルの曲がまたかっこよくて。「エンリルと13月の少年」って曲が、なにこの冒頭のピアノは!歌の後ろでもずっと鳴ってるこのピアノなんですか!っていうかっこよさなのです。声もすごく好きです。YouTubeはこちら(https://www.youtube.com/watch?v=inL4lc_ucZU

で、この人たち、ミュージシャンなんだけどプロの漫画家でもあるんです。超多忙らしくて、そんなところが藤谷さんそっくりだなーと思うんですが、「グラスハート」の中に入ってると同タイトルの「ストロボライツ」っていう曲もあって、グラスハートを読んでからこの曲を聴くと、もうドキドキしちゃうんですよね。冒頭のギターの音が好きすぎて困る。(https://www.youtube.com/watch?v=CUybXos56Ks

・・・という具合にどこまでも書いてしまいそうです。どうしよう。笑

ちなみに(まだ書くか)
さっき書いた「ハイスクールオーラバスター」シリーズはCDが出てるんですが(ドラマCDも出てる)、作詞が若木未生さんと藤谷さんの共作なんですね。共作って若木さんが作者で藤谷さんはキャラクターなんですけど(笑)グラスハートを読んでからあの曲聴くと違って聴こえるんだろうなって思いつつ、もったいなくて聴けてないです(おい)